東京二期会がボン歌劇場とウェールズ・ナショナル・オペラとの提携で、ヴェルディ「運命の力」を公演。
デヴィッド・パウントニーの演出は時代設定を明確にしないシンプルな装置を土台にしつつ、オペラの表題を常に意識させる仕掛けがあった。戦争賛美の場面で兵士たちの動きを醜く戯画化する一方で、実際の悲惨な戦争の映像を舞台上に投影したのは、まさに人類が愚かな戦争を止められない「運命」にあることを皮肉たっぷりに示していた。
さらに強烈だったのは、この物語で愛し合い、憎み合う3人の主要登場人物がいかに行動しても、破滅が不可避であることを示すべく、いわば「運命の神」を登場させた点。まず、序曲冒頭で「運命」の動機として鳴り響く三つの音に合わせて、「神」が 杖 を床に打ち鳴らすのだが、「神」はこの動機が現れる度に舞台に登場して杖を打つ。この神は冒頭でヒロインのレオノーラの侍女クッラ、軍隊について回る女プレツィオジッラの役も兼ねていたが(2人は「神」の手先であることを示唆?)、4日の花房英里子と5日の加藤のぞみの存在感は、人生予定説を 彷彿 とさせる演出の後味の悪さを味わうに十分だったと言えよう。
4日と5日の歌手陣はどちらも、国内であまり上演されてこなかったこの作品の音楽を堪能するに不足はなかったと言えるが、歌唱の出来栄えで見れば総合的には5日の方に軍配を上げられるだろうか。特に要と言うべきレオノーラを歌った大村博美が、どの音域でもムラのない安定した歌唱で舞台を引き締めていたのが印象に残る。指揮の八嶋恵利奈が東京フィルハーモニー交響楽団を率いて、そつなくバランスを整えていたことも付記しておきたい。(音楽評論家・安田和信)
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