米中2大国の間には、世界の安定や安全を左右しかねない深刻な対立や緊張が存在する。
にもかかわらず、米国が目先の成果を優先して課題を先送りし、過剰なまでの友好を演出したことで、中国に主導権を奪われた印象は否めない。
中国の習近平国家主席が国賓として米ワシントンを訪問し、トランプ米大統領と会談した。トランプ氏は自ら空軍基地で習氏を出迎えたほか、ホワイトハウスに駐機中の大統領専用ヘリコプターに招き入れる異例の対応をとった。
トランプ氏は11月に中間選挙を控えている。イランとの戦闘の出口は見えず、ガソリン価格の高騰などで支持率が低迷する中、中国と全面対立する余裕はない。
派手な演出や課題の先送りで成果を誇示するしかなかったのだろう。会談に先立ち、米中は貿易戦争の休戦期間を2か月延長することで早々に合意した。
習氏は歓迎式典で、「米中関係という大船を安定して遠くへと導きたい」と述べた。2大国が共存し、世界を主導することに自信を深めているのだろう。
会談で習氏は、米中が覇権を競うAI(人工知能)開発を巡り、「人間の管理」が必要だと述べた。米国では最先端AIが制御不能となる事故が相次ぐが、トランプ氏は規制は不要との立場だ。
AIの悪用や暴走を防ぐためには、米中が対話や協力を進めることが欠かせない。
また習氏は、米国が台湾独立に反対の立場を表明するよう要求した。米国はこれまで台湾独立を「支持しない」としてきたが、習氏は台湾統一をめざす中国の主張に沿う言いぶりを求めたものだ。
米国側は、トランプ氏の台湾に関する発言を発表していないが、5月の首脳会談後、トランプ氏自身、台湾への武器売却は中国との取引材料になると述べている。
トランプ氏は安易な言動で台湾海峡情勢を不安定化させるようなことがないようにしてほしい。
一方、トランプ氏は式典で、第2次大戦中の米中両国は「同盟国」だったと述べた。だが、当時の中国は蒋介石が率いた中華民国であり、戦後に成立した中国とは政治体制が異なる。
ところが、習氏も「中米両国は共にファシズムの侵略に立ち向かった」と応じ、 晩餐 会でも「中米両国は日本の軍国主義の侵略者に対抗した」と述べた。
米中首脳会談が、中国の対日批判の宣伝の場として利用されたことはきわめて遺憾だ。