木の安らぎ 階段閲覧室<北九州市立大>

木の安らぎ 階段閲覧室<北九州市立大>

大きなガラス窓が特徴的で、近未来の雰囲気を漂わせる建物が、北九州市立大の北方キャンパス(北九州市小倉南区)にはある。約17万冊が収められた図書館本館だ。

自然の光をふんだんに取り入れており、書架がある3階までの吹き抜けはまぶしいほど明るい。3階に上がると、目の前にはぬくもりのある大きな木の階段が広がった。両側を白い壁、正面はガラスで仕切られた静穏な空間は靴を脱いでくつろげる閲覧室だ。

室内は淡いオレンジ色の照明に包まれ、座布団に座ったり、足をのばしたりして自由に本を読める。

文学部2年の田中愛梨さん(21)は学術的な本は机に向かって読むが、小説は閲覧室で読むと決めている。「リラックスして読めるので、小説の世界に入り込むことができるんです」とほほ笑んだ。

館内は基本的に会話が禁止だが、グループ討議などに使う1階の「ラーニングコモンズ」だけは別だ。活発な意見交換で刺激し合えるようにと、仕切りはほとんど設けられていない。開放的な空間は試験期間中、友人と話しながら勉強する学生で埋め尽くされるという。

文学部4年の村田四葉さん(21)は「友人と一緒に勉強したり、講義についての話し合いや調べ物をしたりするなど日々使っています。ここに来れば誰かに会えるので、空き時間に何となく来ることもあるんです」と話した。

官営八幡製鉄所が操業し、工業地帯として栄えた北九州市は、1960年代に大気汚染や水質汚濁が深刻化した。公害を克服した市は現在、「環境未来都市」を掲げる。

図書館本館は、そんな市の理念を体現している。屋上に太陽光発電パネルを設置し、1フロアほどの電力をまかなっている。書架の照明は、人が通りかかると点灯するセンサー式で、書架には明るい配色の木材を使用。雨水をためるタンクもあり、屋上緑化に活用している。

「節電を意識しつつ、空間が暗くならないようにしている」。図書館職員の伊崎仁美さん(46)が教えてくれた。床のマットは、江戸時代から伝わる小倉織をイメージしたしま模様になっており、設計した当時の准教授が細部までこだわってデザインしたとのことだ。

学生たちの環境への意識を高めようと、3階にはSDGs(持続可能な開発目標)や、多様性に関する書籍のコーナーもある。

北九州市は、「銀河鉄道999」の作者・松本零士(1938~2023年)ら、100人を超える漫画家を輩出し、「漫画の街」としても知られる。

大学は市漫画ミュージアム(同市小倉北区)との交流が盛んで、1階にはミュージアムから寄贈された約1500冊の漫画を備える特設コーナーがある。近年の話題作から半世紀前の作品まで、蔵書は幅広い。コーナー横のソファ席はほぼ毎日、学生が腰を下ろす。

基盤教育センター教授で図書館長の浅羽 修丈 さん(52)は「漫画も小説などと同様にストーリーを紡ぎ、著者のメッセージが込められている。漫画があることで、図書館に気軽に足を踏み入れやすくなっている」と強調する。

「目的の本だけでなく、色々なタイトルを指でなぞりながら歩くのも、図書館の楽しいところだ」と浅羽さん。学生たちとの出会いを待つ蔵書の数々を眺めながら、自然と胸が躍った。

■大学概要 戦後間もない1946年、進駐軍の通訳を養成するために設立された「小倉外事専門学校」が起源。50年に北九州外国語大に昇格した。53年に北九州大に改称し、2001年に現在の名称となった。北九州市小倉南区の 北方 キャンパスと、同市若松区のひびきのキャンパスに法、外国語、経済など計5学部と地域創生学群がある。学生数は大学院も合わせて計約6800人。環境問題への取り組みなど市の特性を生かし、「豊かな未来に向けた開拓精神に 溢 れる人材の育成」を掲げる。

■図書館 本館は、大学創立70周年を迎えた2016年に開館した。一部4階建てで、延べ床面積は約3800平方メートル。旧図書館は、南北書庫として本館に接続している。蔵書数は、書庫も合わせて約63万冊。北九州市民は図書館利用証を発行すると、一部の貴重書を除いて借りられる。

近代民法典の範とされるナポレオン法典(フランス民法典)に多大な影響を与えた法学者ジャン・ドマ(1625~96年)の著書。「全集」と位置づけられる「自然的秩序における民事法、公法、並びに(学説 彙纂 および勅法彙纂から)抜粋された法・新版」(1767年版)は、民事法や統治機構のあり方、検事でもあったドマの演説内容をまとめたものだ。

出版から250年以上が経過しているが、文字は読み取れ、保存状態は良い。法学部の福本忍教授(46)は「欧州や日本、遠くは南米から民法典の元をたどると、ドマにたどり着くほどの影響を与えた。考え方の全容が分かる希少な資料で、申請すれば誰でも現物を手に取れる」と説明する。

学生時代、地元の書店で見つけた経済地理学の本が面白く、立ち読みで半分ほど読みました。著者がいる大学院に進み、現在の私の専門になっています。

そんなセレンディピティー(偶然の出会い)が、図書館の魅力です。最近の小説や戦国時代の戦記物のタイトルにひかれて手に取ることもあります。専門と異なる分野の本から、別の目線を知ることもできます。

図書館に行く理由は、真夏に光熱費を節約して涼むためでも良いと思います。何万冊という本に囲まれた空間には、新しい世界が開けるきっかけがきっとあります。

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