国内第2の広さを誇り、ワカサギをはじめとするさまざまな魚が豊富な漁場だった八郎潟。干拓事業(1957~77年)の開始から間もなく70年となる中、干拓前の地域住民が使用していた八郎潟の漁具などの収集・保存を行う「 潟船 保存会」(潟上市)は、往年の八郎潟や地域の姿を懐かしんでもらおうと、周辺市町村の福祉施設などで漁具などの出張展示に取り組んでいる。(鈴木茉衣)
24日、潟上市昭和大久保の特別養護老人ホーム「昭寿苑」を、保存会の目黒和夫会長(84)と事務局の天野荘平さん(77)が訪れた。保存会は昭寿苑で7~28日、漁具や当時の人々の暮らしぶりを写した写真など計約50点の出張展示を行っており、この日は入所者向けに2人が直接、資料に関する解説を行った。
「これは皆さんも知っている坂本九ちゃんのおじいさんが秋田に移住した時、茨城県の霞ヶ浦から伝えたんですよ」。八郎潟で使われていた木造の潟船「 打瀬船 」について天野さんが説明すると、集まった人から驚きの声が上がった。入所者たちは展示品や写真を見ながら「懐かしい」「これ知ってる」と会話に花を咲かせ、進藤ヨロさん(82)は「昔のことを思い出して楽しかった」と目を細めた。
八郎潟の漁業を巡っては、漁具78点と潟船1隻が1960年に国の重要有形民俗文化財に指定されており、普段は潟上市内の収蔵庫に保管されている。一方、今回並べているのは保存会が地域住民から収集したものなどで、文化財などの指定を受けていない。その分、出張展示などを行いやすく、貴重な資料を手に取って眺めることも可能だ。
出張展示の試みは昨年から始め、9月までにのべ15施設で実施した。高齢者に博物館の収蔵する民具などに触れて懐かしんでもらう富山県の氷見市立博物館の「地域回想法」という取り組みにヒントを得た。
天野さんは「皆さんからもらってきたものを眠らせるより、活用して喜んでもらいたい。保存に向けて、興味を持つ人が出てくれれば」と話している。問い合わせは、天野さん(090・4882・0262)へ。