自殺をどうすれば防げるのか。その取り組みの一つとして、松山市は「ゲートキーパー(命の門番)」の養成に力を入れる。身近な人の異変に気づき、悩みに耳を傾け、専門家らによる支援につなげる存在。この15年間に、市の養成講座を延べ1万8000人超が受け、命を守る支援の輪が広がる。(氷見優衣)
「まずは話をよく聞くこと。そして最後に『よく私に話をしてくれましたね。ありがとう』と感謝の言葉を伝えてください」
8日に市保健所で養成講座があり、NPO法人「こころ塾」(松山市)の代表理事、村松つねさん(71)が、参加した約40人に語りかけた。
ゲートキーパーは、特別な資格や専門的な知識が必要なく、誰にでもなることができる。一方、精神的に追い込まれている人が周囲にいないか目を光らせ、医療機関や専門家の支援につなぐ重要な役割を担う。
村松さんは、悩んでいる人が示すサインを紹介し、声をかける際の注意点について助言。参加者はグループに分かれ、「死にたい」と打ち明けられたのに「誰にも言わないで」と言われた場合にどうすべきか、真剣に話し合った。
参加した松山市の会社員女性(32)は「ただ話を聞くだけでなく、寄り添い、正面から受け止めることが大事だと学んだ」と振り返った。
愛媛県内の自殺者は近年、減少傾向にあるが、依然として1年に200人以上が、自ら死を選ぶ状況に追い詰められている。
県によると、県内の自殺者は2024年に214人で、前年から11人減り、22年(254人)から2年連続で減少した。一方、若い世代の自殺が多く、10~40歳代で死因の1位が「自殺」となっているという。
市町別で最も多いのが松山市だ。市によると、24年の自殺者は82人だった。中でも、40~50歳代の自殺が目立ち、働く世代の対策が課題となっている。
市は11年度から、ゲートキーパーの養成講座を年4回開催。各回90分を目安に、必要な知識や心得などを伝えている。毎回50人程度の参加者は、医療関係者や会社員、学生など幅広い。働く世代が講座に参加しやすいよう、夜間や土日に開催し、普及に力を入れる。
市保健予防課の担当者は「悩んでいる人を『助けたい』という気持ちがあれば、誰でもゲートキーパーになれる。ぜひ講座に参加してほしい」と呼びかける。
<村松さんにゲートキーパーの心得を聞いた>
自殺は、さまざまな要因が複雑に絡み合い、心理的に追い込まれていった結果。死ぬ覚悟があるなら生きられたはず、というのは違います。
まずは、しんどいと思っている人に気づくことが重要。「自分は話を聞くことしかできず役に立てない」と思うかもしれませんが、話すことで抱えているしんどさを少し手放せることもあります。解決に向けて頑張ろうとせず、話してくれるまで待ち、聞き役に徹することが大事です。
ゲートキーパーになる人も、自分の心と体が健康でないと、誰かに寄り添うというのは難しい。つぶれそうなほど大きな負担を抱える必要はありません。身近な人に目を向けることから始めてみてください。