県内で、肉食の外来魚「コウライオヤニラミ」の生息域が拡大している。2017年に都城市の大淀川水系で生息が確認され、今年5月には宮崎市の清武川水系でも見つかった。希少な固有種を捕食し生態系に影響を及ぼすことが危惧され、有識者は警鐘を鳴らす。拡大の要因とされる、放流などへの対策も強化されている。
7月4日、都城市の大淀川水系・沖水川で、河川環境の向上などに取り組む同市のNPO法人「都城大淀川サミット」の会員ら約20人がコウライオヤニラミの駆除活動を行った。水中に電気を流して魚をしびれさせる「電気ショッカー」を岸の茂みの下に潜らせ、浮いてきたところを網ですくうなどし、50匹を捕獲。コウライオヤニラミとみられる卵も見つけた。
コウライオヤニラミは在来種の魚や水生昆虫を捕食し生態系に影響を及ぼすため、同サミットは昨夏から県や同市などと協力して駆除に取り組む。同サミットの宇都年文・理事長(68)は「大淀川水系では広がっている。駆除だけでなく、県民への啓発活動も必要だ」と語る。
コウライオヤニラミは17年に同水系の萩原川で国内で初めて見つかり、24年7月の県の調査では沖水川など同水系の4支流への広がりが確認された。県は24~25年に萩原川で生態に関する調査も行い、産卵期が3~6月であることなどが判明。今後、調査結果を踏まえ、駆除方法の検討などを進めるという。
希少な固有種を捕食し、生存を脅かしている実態も分かっている。宮崎大の岩槻幸雄名誉教授(魚類学)らのグループが昨年6月に沖水川で釣ったコウライオヤニラミの胃の内容物を調べたところ、環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類になっている大淀川水系などの固有種「オオヨドシマドジョウ」を確認した。
岩槻名誉教授は「早急に対応しないとオオヨドシマドジョウは都城からいなくなる。危機的状況だ」と語る。
コウライオヤニラミは元々観賞用の魚だった。岩槻名誉教授によると、県内の河川に持ち込まれた経緯は不明だが「飼育しきれなくなった人が放流したのでは」と推測する。
今年5月に県が行った調査では、初めて宮崎市の清武川水系でも10センチ程度の2匹が捕獲された。淡水魚のため大淀川水系から海を経て移動することは考えにくく、県は「人為的に持ち込まれた可能性がある」(水産政策課)とみる。
生息域の拡大を防ぐための対策も進められている。漁業者らでつくる県内水面漁場管理委員会は24年、大淀川水系からコウライオヤニラミを生きたまま持ち出すことや県内の河川などに放流することを禁止する指示を出した。今年5月の清武川水系での発見を受け、持ち出しの禁止の対象は県内全域に拡大された。
今月1日、コウライオヤニラミは外来生物法に基づく特定外来生物に指定された。海外から持ち込まれた生物のうち、生態系、農林水産業などに被害を及ぼす、またはその恐れがあるとするものを指し、飼育や運搬、野外への放出などに対し、より厳しい罰則が科されることになる。調査や駆除に国の財政的な支援も受けられるという。指定に伴い、県内水面漁場管理委員会による放流などの禁止指示は廃止されることが決まった。
県自然環境課は「法律で禁止されることで啓発や駆除を進めやすくなる。研究者やNPO、関係機関と連携し、生息域の拡大防止に努めたい」としている。
コウライオヤニラミの生息域を広げないように、駆除を目的にした釣り大会が開かれたり、コウライオヤニラミを使った料理レシピを開発したりする取り組みが行われている。
都城大淀川サミットは昨年9月、都城市内でコウライオヤニラミの釣り大会を初めて開催し、県内外から約120人が参加。約80匹を釣り上げ、調理するなどした。今月26日にも開く予定だ(参加者の募集は終了)。
また、同市と宮崎市にキャンパスがある南九州大の環境園芸、管理栄養両学科の学生は駆除後の有効活用を目的に、コウライオヤニラミの南蛮漬けやフライを使ったハンバーガーなど4種類のレシピを考案した。
コウライオヤニラミは白身でさっぱりした食感が特徴だといい、昨年10月には都城市内の環境関連イベントでレシピを配布するなどした。