熊本地震の被災地を初めて訪れた。日本テレビ系列NNN取材団の一員として8月12日から19日までの8日間、現地入りした。38度に達する猛烈な暑さの中で目に飛び込んできたのは、倒壊した建物や橋、ひび割れた道路。地震発生から3週間となるこの時も、街には深い爪痕が残されていた。そんな中、懸命に暮らしを立て直そうとする人たちの姿があった。
震度6強を観測した八代市ではまだ断水が続いていた。取材した理容室は水が出ない中で営業しており、飲み水は地域の施設から、生活用水は近所の農家から分けてもらう。そのためシャンプーができず、お客さんの髪を切った後はタオルで拭いていた。「店を開けたい」と、店主は何とか工夫を重ねていた。停泊中の大型フェリーでは入浴支援が行われていた。汗を流し温かい風呂に入る――。そんな当たり前の時間が、被災者たちの大きな支えになっていた。
印象深い場面は他にもある。サッカー日本代表の森保一監督が被災地を訪れた時。監督からエールを送られた子どもたちの、はじけるような笑顔が忘れられない。高校野球では、「夏の甲子園」初出場ながらベスト8に輝いた有明高校の試合を、地元から画面越しに応援する人たち。割れんばかりの声援を力強く送る光景には涙がこぼれた。
災害復旧に道路や建物、ライフラインが不可欠なのは言うまでもないが、人が前を向くためには誰かの声や笑顔も必要だ。誰かの背中を押す人たちの姿を見て、そう強く思った。(テレビ信州アナウンサー)