【大阪ひと語り】異国で追うボールと夢

【大阪ひと語り】異国で追うボールと夢

門真市出身の吉田泰輝さん(34)は、日本代表選手を目指してサッカーに打ち込み、現在はインドでサッカーアカデミーを手掛けています。「SAMURAI BLUE」のユニホームを夢見ていた青年は、指導者という新たな夢を見つけ、インドの子どもたちと懸命にボールを追っています。

「キャプテン翼」に憧れ、幼い頃からサッカーの練習に明け暮れました。13歳から「ガンバ大阪門真ジュニアユース」でDFとしての技術を磨き、18歳で当時社会人リーグに所属していた「FC大阪」(現・J3)に入ることになりました。

大学に通いながら、高いレベルの選手たちと一緒に汗を流す日々。「夢に一歩近づけた」と期待に胸を膨らませましたが、その気持ちは、わずか1年で断ち切られました。チームに残ることができなかったのです。

それでもプロへの道を諦めきれず、大学を休学してドイツへ2年間のサッカー留学に。日本では、部活の厳しい上下関係や様々なことに同調を迫られる風潮に息苦しさを感じていたこともあり、どんな立場でも自分の意見を表明できるドイツでの日々はとても新鮮なものでした。

アマチュアクラブからスタートし、1年後にはセミプロクラブとの契約にこぎ着けました。しかし、公式戦でピッチに立つチャンスは訪れませんでした。悔しさはもちろんありましたが、「やるだけやった」との思いが上回り、帰国後は「サッカーと関係のない人生を歩もう」と大学に戻って経営の勉強に励みました。

海外で暮らしながら英語やITを身につけたいと考え、卒業後は「インドのシリコンバレー」と呼ばれる南部の都市ベンガルールのIT企業で働くことにしました。

たまたま日本人駐在員でつくるサッカーチームに誘われてプレーするうち、現地のサッカー関係者と親しくなり、インドのサッカー教育が発展途上であることを知りました。

恩返しの気持ちもあって、2019年に小中学生を対象としたサッカーアカデミーを設立。最初の2か月間は誰一人グラウンドに来てくれませんでしたが、プライベートレッスンなどきめ細かい指導を続けていくうち「高いスキルを身につけられる」と評判が広がっていきました。

今では、9人のコーチがいて、幼児から社会人まで約450人を教えています。優秀な選手を約1か月間大阪に連れて行き、日本の中学生たちと一緒に練習する“日本遠征”も実施しており、今夏も13~15歳の4人が来阪し、試合にも出場しました。戦術面や個人技などレベルの高い同年代の選手からたくさんの刺激を受けたようです。

もちろん、文化も習慣も違う異国でコーチ業をするのは並大抵なことではありません。「かすり傷」と言える程度のけがをしただけで、「なぜ医者に連れて行かなかったのか」と保護者から詰め寄られることもあり、信頼を得るのも一苦労です。遠征の間にインド人のコーチが別のサッカーアカデミーを発足させ、選手を大量に引き抜かれてしまったこともありました。

それでも、教え子たちがいつかインドのサッカー界をリードする存在になってくれることを願って指導を続けています。私自身も、プロチームのコーチになるという新たな夢に向かって 邁進 していくつもりです。(聞き手・渋谷聖都子)

▼門真市生まれ。インドで知り合った日本人の妻、息子とベンガルールで暮らしながら、設立したサッカーアカデミー「SAMURAI BANGALORE FA」で指導にあたる。インドは、今年開催されたW杯北中米3か国大会ではアジア予選敗退だったものの、近年、サッカー熱が高まっているという。

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