ケアリーバーに支援の手 各自治体 居場所確保や経済援助

ケアリーバーに支援の手 各自治体 居場所確保や経済援助

児童養護施設や里親家庭で育ち、社会に出た若者「ケアリーバー」を支援する動きが、都内で広がっている。頼れる大人が少ないため、生活に困窮したり、孤立したりするケースが多く、各自治体は居場所の確保や経済支援を進めている。(美根京子)

練馬区の区立春日町青少年館で4日夕、食材の買い出しを終えた19~20歳の男女4人が一緒に料理をしていた。この日のメニューはバターチキンカレーとスープ。「今日も朝早くから仕事を頑張ったよ」「このアイドルが好きなんだ」――。夕食を食べながら、お互いの近況や趣味について和気あいあいと語り合った。

4人は都内の児童養護施設で育ち、社会に出たばかりだ。区は昨年度から、こうした若者を支援する「ねりま羽ばたく若者応援プロジェクト」を始め、昨年7月、同館に毎週金曜日、無料で利用できる場所を開設した。NPO法人「文化学習協同ネットワーク」(三鷹市)が区の委託を受けて運営し、同法人の職員らが困り事の相談にも応じる。

同プロジェクトでは施設退所後、最長5年にわたり、家賃(月額上限3万6000円)や光熱水費(月1万円)を補助している。やむを得ない事情で生活に困窮した場合は、一時的に家具付きアパートを提供する。今年度からは、法律相談に応じる弁護士の数を増やしたほか、区内のカフェに月1回、店内のスペースを開放してもらい、新たな交流場所をつくった。

今春から社会人になった練馬区の会社員女性(18)は、区の家賃補助を受け、金曜夕は同館で過ごしている。「物価高で家賃も高くなっているので、とても助かっている。どれだけ仕事が大変でも、この居場所には来たい。仲間と話せる時間があることがうれしい」と笑顔を見せた。

こども家庭庁などによると、児童養護施設や里親家庭などで暮らす子供は全国に約4万人。うち都内在住者は約4000人に上る。

厚生労働省が2021年に公表したケアリーバーら約2万人を対象にした調査では、5人に1人が収入より支出が多い「赤字」の生活に陥っていた。困り事や不安なこと(複数回答)は「生活費や学費」が33・6%と最多で、「将来」が31・5%、「仕事」が26・6%と続いた。

こうした現状を受け、他の自治体もケアリーバーの支援に乗り出している。

豊島区は23年度から、給付型奨学金(年間上限50万円)や、施設の退所に伴うお祝い金(10万円)を支給している。今年8月からは、コミュニティー拠点「イケルート」で月1回、居場所の提供を始めた。

板橋区は今年度から、光熱水費(年間上限6万円)の補助を新たに開始。医療費助成についても、年間の上限額を2万4000円から6万円に引き上げた。

世田谷区は昨年度から、施設や里親のもとで暮らした経験がなくても、虐待などを受け、親族からのサポートがない若者も経済支援の対象に加えた。区児童相談支援課の柏原耕治朗課長は「ケアリーバー以外にも、逆境的な環境で過ごした若者もいるだろう。当事者たちが進学や就職などで同じスタートラインに立てるようにしていきたい」と話す。

一方で、支援が必要な若者にどう事業を周知していくかが課題となっている。

練馬区は今年度、日本大学芸術学部の学生に、支援策を紹介するチラシやポスターの作成を依頼。関心を引くようなデザインを考えてもらい、年度内の配布や掲示を目指している。

区子ども家庭支援センターの長岡毅所長は「しっかりと情報を届けられるように、広報活動にも力を入れていく」と話している。

ケアリーバーへの支援に詳しい武蔵野大学の永野咲准教授(社会福祉学)は「家族の支えがない若者は、物価高など社会情勢の影響を受けやすい。仮に働けなくなれば、一気に生活がままならなくなる。『自分には誰かがいてくれる』という安心感も生きる上で重要で、経済援助と人とのつながりの双方が大事だ」と指摘。「施設や里親から離れると連絡が途絶える人も少なくない。退所前から相談先や居場所を知ってもらい、普段から関係を作っておく必要がある」としている。

■ケアリーバー 児童養護施設や里親家庭などで育った経験のある若者。「ケア(care)」から「離れる(leave)」という意味がある。2024年4月の児童福祉法改正で、施設や里親のもとで暮らせる年齢制限(原則18歳、最長22歳まで)が撤廃され、自立可能かどうかで判断されることになった。

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