<秋旅スポット> 特別名勝の断崖 船で

<秋旅スポット> 特別名勝の断崖 船で

奈良、三重、和歌山3県を流れる熊野川の支流、北山川の渓谷「瀞峡(どろきょう)」を船で巡るツアーが人気だ。乗客らが水上の眺めをSNSで発信した影響もあり、近年は若者らの乗船が増えているという。

「めっちゃ気持ちいい」「わー! 水がきれい」

12日、2隻の木造船が「瀞峡めぐり乗船場」(新宮市熊野川町玉置口)を出発。上流に向けて、水しぶきを上げて走り出すと、乗客計15人が歓声を上げた。

澄んだ水面をのぞき込むと、川底が透けて見える。周囲の景色は次々と表情を変え、やがて切り立った断崖が迫ってきた。ツアー一番の見所「瀞八丁」だ。「ここから下瀞1・2キロ、上瀞2キロをご案内します」。船頭の佐野健一さん(74)が声を張った。

高さ約20~50メートルの巨岩や奇岩が連なる瀞八丁は1928年に国の天然記念物、52年には国の特別名勝に指定された。「亀岩」「とさか岩」……。動物などの姿に見立てた岩を佐野さんが次々と紹介してくれる。1605年の慶長地震で滑り落ちたとされる「墜落岩」に近づくとエンジンを止め、間近まで船を寄せる。頭上に迫る岩壁の迫力に圧倒された。

目を凝らせばスズメバチの巣が崖にぶら下がり、スッポンが岩の上で甲羅干し。視線を落とすとアユが泳いでいる。友人同士という20歳代の女性3人組は自然の美しさを求めて、東京などから白浜町経由でレンタカーで訪れたという。「船頭さんの案内を聞きながら、この日にしか体験できない景色や動植物の姿を楽しめた」と笑顔を見せた。

一般財団法人「熊野川町ふれあい公社」が2022年に始めた「瀞峡めぐり川舟クルーズ」。新宮市熊野川行政局によると、22、23年の乗客数は4000人台だったが、24、25年には8000人近くに伸びた。

「カモシカに出会えることもある。季節ごとに魅力ある景色を楽しんでもらえれば」と佐野さんは話す。秋の深まりとともに雄大な眺めを楽しむ観光客でさらににぎわいそうだ。(望月弘行)

<メモ> 乗船場は新宮市中心部から車で約40分。木造船は予約制で定員8人。運航期間は3月1日~11月30日。月曜運休(祝日の場合は運航し、翌日運休)。料金は1人3000円、4歳~小学生1500円。問い合わせは熊野川川舟センター(0735・44・0987)。

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