災害などで断水した場合、水の確保策は重要だ。家庭用給湯器「エコキュート」は、断水時などに生活用水を取り出せる利点がある。水道管につなぐ貯水タンクは飲料用としても使える。(木引美穂)
7月28日に発生した熊本地震では、熊本県など4県で最大約10万8100戸が断水し、復旧までに約1か月かかった。2016年の熊本地震や24年の能登半島地震と比べて復旧は早かったが、真夏の災害で水の確保の重要性が認識された。
政府は、災害に備え、1人あたり1日3リットルの水を備蓄するように呼びかけている。ただ、この量は飲んだり調理したりするための分で、他に生活用水も1日10~20リットル必要になると言われている。
その際、注目されるのが、エコキュートだ。外気の熱で湯を沸かす家庭用給湯器の愛称で、電機・住宅設備メーカー各社から販売されている。電気代が割安な時間帯の電気を活用して1日分の湯を沸かし、貯湯タンクにためる。
普段はタンクにためた熱い湯と水道水を混ぜて、蛇口やシャワーから適温の湯が出る。断水すると、蛇口からは湯も水も出なくなるが、タンク内にたまっている湯水を取り出して使える。購入や設置に国や自治体から補助金も出るため、導入が増えている。23年度の環境省の調査によると、戸建ての約3割に導入されている。
川崎市の男性(64)は今年5月に引き渡しを受けた新居にエコキュートを設置した。タンクの容量は370リットル。妻(64)と愛犬2頭と暮らし、災害時もできれば自宅で避難生活を送りたいと考えている。そもそもの設置理由は省エネだったが、「非常時に水を利用できることは安心感につながっている。ただ、実際にタンクから水を出したことがないので、手順を確認しておかなくては」と話す。
施工した工務店「小泉木材」(横浜市)社長の小泉武彦さんは「引き渡し時などにお伝いはしているが、数多くの説明に埋もれてしまうのが実情。引き渡し後も疑問があれば問い合わせてほしい」と話している。
手動によるエコキュートからの湯水の取り出し方法を、平時に確認しておくと、いざというときに慌てずに済む。
男性が購入したパナソニック製の場合、機器の前面下部のカバーを外して、漏電遮断器をオフにし、給水元栓を閉じる。上部にある逃し弁レバーを上げて、非常用取水栓にホースの口を差し込み、もう一方の口をバケツなどの容器で受ける。取水栓のダイヤルを緩めれば湯水が出てくる。
手動による水の取り出し方法は、メーカーごとに異なる。取扱説明書やウェブサイトであらかじめ確認しておきたい。
エコキュートは、家の新築時だけでなく、リフォーム時に設置することもできる。タンクの容量は複数設定されていて、家族の人数によって選べる。高さが2メートル前後あり、大きくて重い機器。基礎への固定や、電気、給排水の工事が必要なため、設置は業者などに依頼する。
国民生活センターによると、今年の熊本地震や能登半島地震などの際には、エコキュートのタンクが転倒したという相談が複数寄せられた。設置から数年以内で転倒したケースもあり、同センターは「説明書通りに設置されているかを確認し、心配な点があったら設置業者に点検を依頼してほしい」と呼びかける。
自宅の空きスペースに設置できて、飲料用としても使えるのが、水道管に直結する貯水タンクだ。普段は水道管の一部としてタンク内を水が入れ替わりながら流れている。断水時は、タンクの取り出し口などから取水できる。自宅の軒下などにも設置できる。
「ミヤコー」(長野県)の「 水蔵 」は、一般住宅用に40~85リットルの商品をそろえる。スペースをとらず、断水時にバルブを開けば取水できる縦置きタイプが人気だ。最近はマンションに導入したいという問い合わせも増えているという。